社会・文化 / DEEP DIVE
防災・国土強靱化
災害大国で磨いた防災技術を、国内の備えと海外で稼ぐ産業に
編集:株式会社アルテレクト / 更新
みらい図鑑の解説イラスト
AI GUIDE / MIRAIミライのやさしい解説
災害に強い街は、どう作る?
被害を減らす設備と、情報を伝えて行動する仕組みの両方が必要だよ。災害が起きた後、暮らしを立て直す備えも含むんだ。
傘を用意するだけでなく、雨の情報を確認し、安全な道や待機場所を決めておくような考え方。
予測やセンサーには限界がある。情報が届くことと、人が避難などの行動を取れることは別に考える必要がある。
- 第1次国土強靱化実施中期計画の事業規模
- おおむね20兆円強[3] 今後5年間の目途。2025年度補正予算から措置
- 防災技術で想定する官民投資額
- 2.6兆円[2] 2030年度までの累計。中期計画の投資とは別枠で想定
- 日本企業の防災分野の海外売上
- 約1兆円→約2兆円[1] 2024年の実績から2030年の目標へ
技術と暮らしが、つながる場面。
道路や橋の状態を点検する場面を例に、この分野の技術がどこで役立つのかを考えてみましょう。
編集部による理解のための図解です。実在の設備や導入実績を示すものではありません。仕組み
この分野は、性格の異なる2つの投資が重なっています [2]。
- 危機管理投資:国土強靱化の計画に沿って、事前防災と老朽化したインフラの予防保全を進めます。官だけでなく、電力・通信・交通・医療といった民間部門の強靱化も含まれます。
- 成長投資:デジタルなどの新技術を使った防災技術を開発し、商品化・実装・需要創出・次の技術開発へとつながる好循環をつくり、防災産業として育てます。
対象となる技術の例として、インフラ老朽化対策、災害リスク関連技術、自動施工・遠隔施工などの施工効率化、防災資機材、消防技術が挙げられています。海外で導入が見込まれる技術としては、地震・水害の観測・早期警戒システム、衛星やAIを使った被災状況の把握、インフラの点検技術などがあります [2]。政府は防災庁の設置に伴う環境整備とあわせ、研究開発・実証の支援、製品のカタログ化、公共調達による需要創出までを一気通貫で支援するとしています [1]。
防災・国土強靱化は、どう動く?
ひとつの技術だけで完結するのではなく、前の工程が次の工程を支えています。図の矢印に沿って、役割のつながりを見てみましょう。
- 1リスクを知る
- 2設備を備える
- 3情報を共有する
- 4避難・復旧につなぐ
市場と規模
第1次国土強靱化実施中期計画は、今後5年間の事業規模をおおむね20兆円強程度を目途としており、初年度分は2025年度第1次補正予算から措置されています [3]。これとは別に、防災技術の官民投資額は2030年度までで2.6兆円、経済波及効果は14.5兆円と想定されています [2]。
ロードマップが引く民間予測では、世界の自然災害管理システムの市場は、2024年の9.6兆円から2030年までに約19.4兆円へ拡大するとされています(1ドル150円換算)[2]。政府は、日本企業の防災分野の海外売上総額を2024年の約1兆円から2030年に約2兆円へ倍増させることを目標にしています [1]。
備えの規模感を示す数字として、政府の被害想定では、南海トラフ巨大地震の資産等の直接被害は約224.9兆円、首都直下地震では約45.1兆円と推計されています [2]。
実用化には、何が必要?
予測やセンサーには限界がある。情報が届くことと、人が避難などの行動を取れることは別に考える必要がある。
編集部による理解のための図解です。実在の設備や導入実績を示すものではありません。課題
- 担い手不足:建設技能者は他産業以上に高齢化しており、2040年には建設業界全体で約64万人が不足する見込みです。中小・零細事業者が多く、防災技術を使いこなす人材の育成も課題です [2]。
- 市場の小ささ:有望な製品・技術が利用者に知られておらず、市場が小さいために民間の自発的な投資が難しい分野があります [2]。
- 事前投資への資金シフト:世界では災害対応関連資金(保険・財政)の96%が発災後の緊急対応・復旧に使われており、リスクを減らす事前投資への転換が求められています [2]。
- 海外展開の体制:官民一体の海外展開の取り組みが不十分とされ、ターゲット国の明確化やODAの活用が施策に挙がっています [1][2]。
主要プレイヤー
- 防災庁 ↗
防災政策の司令塔。2026年11月に発足
- 防災科学技術研究所 ↗
陸海統合地震津波火山観測網MOWLASやE-ディフェンスを運用
- ウェザーニューズ ↗
民間の気象情報会社として予報と防災情報を提供
- スペクティ(Spectee) ↗
散在する危機情報をAIで収集・可視化し、被害状況を分析
- 小松製作所 ↗
建設機械の自動化・遠隔操作など施工のICT化を推進
- ID&Eホールディングス(日本工営) ↗
建設コンサルタントとして国内外の防災・インフラ事業を手がける
出典
- [1]日本成長戦略(閣議決定)内閣官房・2026-07-21
- [2]戦略17分野における「主要な製品・技術等」の官民投資ロードマップ(防災・国土強靱化分野)内閣官房(日本成長戦略本部決定)・2026-07-21
- [3]令和8年版 防災白書 特集 第4章 1-3 事業規模及び社会状況や事業実施環境の変化への対応内閣府・2026
- [4]日本成長戦略本部(第1回)資料 成長戦略の検討課題内閣官房・2025-11-04

