エネルギー / DEEP DIVE
フュージョンエネルギー
2030年代の発電実証を、世界に先駆けて国内で実現する
編集:株式会社アルテレクト / 更新
みらい図鑑の解説イラスト
AI GUIDE / MIRAIミライのやさしい解説
地上で核融合を使えるの?
軽い原子核が融合するときのエネルギーを利用しようとする研究だよ。反応の実現と、発電所として安定運転することには距離があるんだ。
高温の状態を保ちながら、そこから熱を取り出す難しい装置を作るイメージ。太陽と同じ条件をそのまま再現するわけではない。
材料の耐久性、燃料の循環、熱の取り出しなど、多くの課題がある。実験の達成と商用発電を区別して読もう。
- 想定する官民投資額
- 3.1兆円[2] 2040年度までの累計。発電実証プラントを1基と仮定した試算
- 目指す世界市場シェア
- 約3割[1] 中長期の目標
- 世界の民間フュージョン企業の累計調達額
- 142.4億ドル[5] 米業界団体FIAの2026年調査(56社)
技術と暮らしが、つながる場面。
高温のプラズマを制御する研究の場面を例に、この分野の技術がどこで役立つのかを考えてみましょう。
編集部による理解のための図解です。実在の設備や導入実績を示すものではありません。仕組み
フュージョン(核融合)は、軽い原子核どうしを超高温で融合させ、そのとき生じるエネルギーを取り出す技術です。燃料の重水素は海水中に豊富にあり、発電の過程でCO2を出さず、燃料の供給や電源を止めれば反応が止まるといった特徴があるとされています [2]。ただし世界的にも発電はまだ実現しておらず、科学的・技術的な実現性を確かめる研究開発段階にあります [2]。
- トカマク型:ドーナツ状の磁場でプラズマを閉じ込める方式。国際熱核融合実験炉ITERや、QSTの那珂フュージョン科学技術研究所にあるJT-60SAで研究が進み、JT-60SAは2023年10月23日に初プラズマを達成しました [4]。
- ヘリカル型:ねじれたコイルで磁場をつくる方式。核融合科学研究所が長く研究してきました。
- レーザー型:燃料にレーザーを当てて圧縮・点火する方式で、大阪大学レーザー科学研究所などが研究しています。
政府は当面、QSTを中心とした「実績ある方法」の技術開発と、スタートアップなどによる野心的な発電システムの開発を並行して支援し、数年後をめどに、早期の発電実証に向けて国が支援するシステムを決める方針です [2]。
フュージョンエネルギーは、どう動く?
ひとつの技術だけで完結するのではなく、前の工程が次の工程を支えています。図の矢印に沿って、役割のつながりを見てみましょう。
- 1燃料を用意する
- 2反応条件を作る
- 3熱を取り出す
- 4発電システムにつなぐ
市場と規模
ロードマップが引くIAEAの試算では、フュージョンエネルギーによる世界のGDP押し上げ効果は、長期的に最大約700兆円超に上るとされています [2]。政府は2040年度までの官民投資額を3.1兆円、その経済波及効果を9.4兆円と想定しています。この投資額は発電実証プラントを1基と仮定した試算で、2030年代の発電実証以降は増えると見込まれています [2]。
海外では、2020年頃から米国を中心に民間資金を集めるスタートアップが相次いで生まれました [2]。米国の業界団体Fusion Industry Association(FIA)の2026年の調査では、56社の過去6年間の累計調達額は142.4億ドル、直近1年間の調達額は44.8億ドルで、年次集計を始めてから最高でした [5]。英国は政府主導の「STEP」計画を設計段階で進め、中国は実証プラント「BEST」を2027年の完成を目指して建設中です [2]。
実用化には、何が必要?
材料の耐久性、燃料の循環、熱の取り出しなど、多くの課題がある。実験の達成と商用発電を区別して読もう。
編集部による理解のための図解です。実在の設備や導入実績を示すものではありません。主要プレイヤー
- 量子科学技術研究開発機構(QST) ↗
ITER計画の国内機関。JT-60SAを運用し原型炉開発を担う
- 核融合科学研究所(NIFS) ↗
ヘリカル型の核融合研究を担う大学共同利用機関
- 大阪大学レーザー科学研究所(ILE) ↗
レーザー方式の核融合研究の拠点
- 京都フュージョニアリング ↗
プラズマ加熱や燃料サイクルなど発電プラントの基盤技術を開発
- Helical Fusion ↗
NIFSの研究を基にヘリカル型核融合炉の実現を目指す
- EX-Fusion ↗
レーザー方式による核融合発電炉の実用化を目指す
出典
- [1]日本成長戦略(閣議決定)内閣官房・2026-07-21
- [2]戦略17分野における「主要な製品・技術等」の官民投資ロードマップ(フュージョンエネルギー分野)内閣官房(日本成長戦略本部決定)・2026-07-21
- [3]フュージョンエネルギー(核融合)内閣府 科学技術・イノベーション推進事務局
- [4]JT-60SA量子科学技術研究開発機構
- [5]Fusion industry raised USD4.5 billion in past year, report saysWorld Nuclear News・2026-07-14
- [6]日本成長戦略本部(第1回)資料 成長戦略の検討課題内閣官房・2025-11-04

