m↗みらい図鑑日本の17の戦略分野運営会社株式会社アルテレクト
みらい図鑑 / フュージョンエネルギー

エネルギー / DEEP DIVE

フュージョンエネルギー

2030年代の発電実証を、世界に先駆けて国内で実現する

編集:株式会社アルテレクト /  更新
フュージョンエネルギーのイメージイラストみらい図鑑の解説イラスト
AIガイドのミライAI GUIDE / MIRAI

ミライのやさしい解説

地上で核融合を使えるの?

軽い原子核が融合するときのエネルギーを利用しようとする研究だよ。反応の実現と、発電所として安定運転することには距離があるんだ。

AIキャラクターによる編集済みの解説です。リアルタイムのチャットではありません。
想定する官民投資額
3.1兆円[2]
2040年度までの累計。発電実証プラントを1基と仮定した試算
目指す世界市場シェア
約3割[1]
中長期の目標
世界の民間フュージョン企業の累計調達額
142.4億ドル[5]
米業界団体FIAの2026年調査(56社)

何が対象か

政府はフュージョンエネルギーを次世代のクリーンエネルギーと位置づけ、世界に先駆けた2030年代の発電実証と、国内外で競争力のある発電プラントを設計・建設・運用できる主体とサプライチェーンの確保を目指しています [1]。取りまとめは科学技術政策担当の内閣府特命担当大臣が担います [6]。国家戦略としては2023年4月に「フュージョンエネルギー・イノベーション戦略」が策定され、2025年6月4日に改定、2026年4月8日には社会実装に向けた取組の在り方が決定されています [3]。

LIFE & TECHNOLOGY

技術と暮らしが、つながる場面。

高温のプラズマを制御する研究の場面を例に、この分野の技術がどこで役立つのかを考えてみましょう。

編集部による理解のための図解です。実在の設備や導入実績を示すものではありません。
技術と暮らしが、つながる場面。
高温のプラズマを制御する研究の場面を描く、説明付きのイラスト。

仕組み

フュージョン(核融合)は、軽い原子核どうしを超高温で融合させ、そのとき生じるエネルギーを取り出す技術です。燃料の重水素は海水中に豊富にあり、発電の過程でCO2を出さず、燃料の供給や電源を止めれば反応が止まるといった特徴があるとされています [2]。ただし世界的にも発電はまだ実現しておらず、科学的・技術的な実現性を確かめる研究開発段階にあります [2]。

日本が取り組む主な方式は3つです [1][2]。

  • トカマク型:ドーナツ状の磁場でプラズマを閉じ込める方式。国際熱核融合実験炉ITERや、QSTの那珂フュージョン科学技術研究所にあるJT-60SAで研究が進み、JT-60SAは2023年10月23日に初プラズマを達成しました [4]。
  • ヘリカル型:ねじれたコイルで磁場をつくる方式。核融合科学研究所が長く研究してきました。
  • レーザー型:燃料にレーザーを当てて圧縮・点火する方式で、大阪大学レーザー科学研究所などが研究しています。

政府は当面、QSTを中心とした「実績ある方法」の技術開発と、スタートアップなどによる野心的な発電システムの開発を並行して支援し、数年後をめどに、早期の発電実証に向けて国が支援するシステムを決める方針です [2]。

HOW IT WORKS

フュージョンエネルギーは、どう動く?

ひとつの技術だけで完結するのではなく、前の工程が次の工程を支えています。図の矢印に沿って、役割のつながりを見てみましょう。

  1. 1燃料を用意する
  2. 2反応条件を作る
  3. 3熱を取り出す
  4. 4発電システムにつなぐ
編集部による理解のための図解です。実在の設備や導入実績を示すものではありません。
フュージョンエネルギーは、どう動く?
フュージョンエネルギーの仕組みを示す図解。燃料を用意する → 反応条件を作る → 熱を取り出す → 発電システムにつなぐ

市場と規模

ロードマップが引くIAEAの試算では、フュージョンエネルギーによる世界のGDP押し上げ効果は、長期的に最大約700兆円超に上るとされています [2]。政府は2040年度までの官民投資額を3.1兆円、その経済波及効果を9.4兆円と想定しています。この投資額は発電実証プラントを1基と仮定した試算で、2030年代の発電実証以降は増えると見込まれています [2]。

海外では、2020年頃から米国を中心に民間資金を集めるスタートアップが相次いで生まれました [2]。米国の業界団体Fusion Industry Association(FIA)の2026年の調査では、56社の過去6年間の累計調達額は142.4億ドル、直近1年間の調達額は44.8億ドルで、年次集計を始めてから最高でした [5]。英国は政府主導の「STEP」計画を設計段階で進め、中国は実証プラント「BEST」を2027年の完成を目指して建設中です [2]。

日本の強み

  • 主要コンポーネントの製造力:プラズマに面するダイバータなどの機器や、高出力・高信頼性の加熱装置を含め、重要なコンポーネントの多くを国内で開発・製造でき、それを支えるサプライチェーンがあります [2]。
  • 海外スタートアップへの供給:米国のスタートアップの装置には、超伝導線材など日本製の製品が多く使われています [2]。
  • 3方式の研究基盤:トカマク型に加え、ヘリカル型・レーザー型でも世界トップレベルの技術力を持ち、QST・NIFS・ILEの3拠点が要素技術の開発を担います [1]。
  • 国際プロジェクトの経験:ITERやJT-60SAなどで、長年にわたる研究開発の蓄積があります [2]。
FROM LAB TO LIFE

実用化には、何が必要?

材料の耐久性、燃料の循環、熱の取り出しなど、多くの課題がある。実験の達成と商用発電を区別して読もう。

編集部による理解のための図解です。実在の設備や導入実績を示すものではありません。
実用化には、何が必要?
フュージョンエネルギーの実用化の課題を、三つの観点で整理した図解。材料の耐久性、燃料の循環、熱の取り出しなど、多くの課題がある。実験の達成と商用発電を区別して読もう。

課題

  • 技術の不確実性:プラズマ制御、炉材料、燃料サイクル、信頼性・保守性など、必要な要素技術の多くが未確立です [2]。
  • リターンの見えにくさ:多額の研究開発費がかかる一方で、現時点では投資回収の見通しを立てにくく、トリチウムの扱いなど民間企業だけでは研究開発が難しい課題もあります [2]。
  • 発電実証に向けた資源:2030年代の実証には、多額の費用と人材、用地や燃料物質の確保、地域の理解が必要です [2]。
  • 安全規制の整備:安全確保と迅速な開発を両立できるよう、国際的に整合した安全規制を開発状況に応じて段階的に整えることが求められています [1][2]。

主要プレイヤー

出典

  1. [1]日本成長戦略(閣議決定)内閣官房・2026-07-21
  2. [2]戦略17分野における「主要な製品・技術等」の官民投資ロードマップ(フュージョンエネルギー分野)内閣官房(日本成長戦略本部決定)・2026-07-21
  3. [3]フュージョンエネルギー(核融合)内閣府 科学技術・イノベーション推進事務局
  4. [4]JT-60SA量子科学技術研究開発機構
  5. [5]Fusion industry raised USD4.5 billion in past year, report saysWorld Nuclear News・2026-07-14
  6. [6]日本成長戦略本部(第1回)資料 成長戦略の検討課題内閣官房・2025-11-04