生命・食 / DEEP DIVE
合成生物学・バイオ
微生物や細胞を「工場」にし、素材や医薬品を国内でつくる
編集:株式会社アルテレクト / 更新
みらい図鑑の解説イラスト
AI GUIDE / MIRAIミライのやさしい解説
微生物が、ものづくりの仲間に?
生物の働きを理解し、目的の物質を作るために活用する分野だよ。設計して終わりではなく、試して確かめる工程が大切なんだ。
微生物を小さな工場にたとえられる。ただし生き物なので、温度や栄養などで働きが変わる。
実験室で作れても、大きな設備で安定生産できるとは限らない。生物の管理、安全性、コストを確かめる必要がある。
- バイオものづくりの売上目標
- 2040年に11.9兆円[1] 日本企業の売上合計。グローバルシェア10%に相当
- バイオものづくりで想定する官民投資額
- 12.8兆円[1] 2040年度までの累計。経済波及効果は66.7兆円と想定
- バイオ医薬品・再生医療等製品等の売上目標
- 2040年に33.4兆円[1] 日本企業の売上合計。グローバルシェア10%に相当
- バイオ産業がもたらす経済効果
- 約165兆円[1] 2030〜2040年。ホワイトバイオ分野のみ。McKinsey(2020年)の数値を1ドル150円で経済産業省が換算
技術と暮らしが、つながる場面。
微生物を使って化学品の原料を生産する場面を例に、この分野の技術がどこで役立つのかを考えてみましょう。
編集部による理解のための図解です。実在の設備や導入実績を示すものではありません。仕組み
バイオものづくりは、微生物や細胞に目的の物質をつくらせ、化学品や素材、燃料などを製造する技術です。ロードマップは、この技術を2つの領域に分けて説明しています [1]。
- ドライ領域:遺伝子や代謝経路の設計、解析、シミュレーション。AIやデータの活用で高度化が進んでいます。
- ウェット領域:実際に微生物や細胞を培養・発酵させ、条件を調整しながら目的物質を安定して大量につくる現場の知見と技能です。
政府は、各国の競争ではとくにウェット領域の成熟度が競争力を左右するとみており、AIで強化したドライ領域と日本のウェット領域の強みを組み合わせて、製造の効率を高める方針です [1]。原料には、糖のほか、国内のバイオマスや廃棄物、CO2などの未利用資源を使う道が想定されています [1]。
合成生物学・バイオは、どう動く?
ひとつの技術だけで完結するのではなく、前の工程が次の工程を支えています。図の矢印に沿って、役割のつながりを見てみましょう。
- 1設計する
- 2作製する
- 3性能を測る
- 4学んで設計を直す
市場と規模
ロードマップは、バイオ産業がもたらす経済効果を2030〜2040年で約165兆円と見込んでいます(ホワイトバイオ分野のみ、McKinseyの2020年の分析をもとに経済産業省が換算)[1]。政府はバイオものづくりについて、2040年に日本企業の売上合計11.9兆円(グローバルシェア10%)を目標とし、2040年度までの官民投資を12.8兆円、その経済波及効果を66.7兆円と想定しています [1]。
医薬品側では、世界の医薬品市場が2022年で約200兆円規模と推計され、そのうちバイオ医薬品や再生・細胞医療・遺伝子治療等が4割を占めるとされています [1]。バイオ医薬品・再生医療等製品等については、2040年に日本企業の売上合計33.4兆円(グローバルシェア10%)を目標に、2040年度までの官民投資を20.8兆円、経済波及効果を174.9兆円と想定しています [1]。
実用化には、何が必要?
実験室で作れても、大きな設備で安定生産できるとは限らない。生物の管理、安全性、コストを確かめる必要がある。
編集部による理解のための図解です。実在の設備や導入実績を示すものではありません。課題
- 技術・ノウハウ・データが分散しており、生産効率が低いことが課題とされています。スケールアップを担う人材や、AI・デジタルに通じた人材も不足しています [1]。
- 既存製品と比べて生産コストが高く、価格競争の中で安定した需要の見通しが立ちにくい状況です。政府は公共調達などで初期需要をつくる方針です [1]。
- 安価な糖原料と労働力を持つ米国・南米・中国で商用化が先行しており、米中では技術開発を一元的に担うプラットフォームが台頭しています [1]。
- 医薬品は自給率が低く、製造工程や周辺産業を含めて他国への依存度が高いとされています。大規模な製造拠点の維持コストや、創薬ベンチャーの資金不足も課題です [1]。
主要プレイヤー
出典
- [1]戦略17分野における「主要な製品・技術等」の官民投資ロードマップ(合成生物学・バイオ分野)内閣官房(日本成長戦略本部決定)・2026-07-21
- [2]日本成長戦略 概要(閣議決定)内閣官房・2026-07-21

